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論点別コラム学校給食と子どもの栄養・体格

給食のある日とない日で、子どもの栄養はどう違うと報告されているか

給食が子どもの栄養を支えている、という話はよく聞きます。研究が扱っているのは、給食のある日とない日の栄養のとり方の違い、家庭の収入による差の出方、体格との関係の3つで、それぞれ答えの確かさが違います。

3つの問いは別々の研究で調べられています

1つめは、給食のある日とない日で栄養のとり方が違うか。2つめは、家庭の収入による食事の差が、給食のある日には小さいか。3つめは、給食の実施や喫食と肥満ややせに関係があるか。1つめと2つめは食事記録などを使った1時点の調査、3つめは時期も比べ方も違う研究が並んでいます。給食費の負担や無償化の効果は、どの問いでも扱われていません。

12都道府県の小中学生では、摂取不足はほぼすべて給食のない休日のほうが多く見られました

2014年に12都道府県の小学生629人と中学生281人の食事を記録した研究です。給食のある登校日と給食のない休日で6割以上の栄養素の摂取量に差があり、不足はほぼすべて休日に多く見られました。一方で、脂質と食塩のとりすぎ、食物繊維の不足は給食があっても残っていました。給食のない日は休日でもあるため、生活リズムの違いも差に含まれ得ます。

東日本の5年生では、収入による差は給食のない日にだけ有意でした

2013年に東日本4県の5年生と保護者836組の食事を記録した研究です。世帯収入が低いほど魚介類や緑黄色野菜、たんぱく質などの摂取が少ない関連があり、その関連は給食のある日には有意でなく、給食のない日に有意でした。同じ調査を収入で3区分して分析した2020年の研究では、どの収入区分でも給食のない日は多くの栄養素で不足が多く、給食のない日には低収入の子どもで鉄や亜鉛などの不足が中収入より多く、給食のある日にはこの差は有意でありませんでした。2本は同じ子どもたちのデータによるもので、別の地域で確かめた結果は含みません。

首都圏の6〜12歳では、給食からとる量に家庭による差がありませんでした

首都圏の社会調査に参加した6〜12歳の719人を調べた研究です。母親の学歴が低い家庭の子どもほど野菜の摂取が少ない差がある一方、給食からとる量には家庭の状況による差がありませんでした。統計モデルで分解すると、給食がこの差を野菜で約1割、果物で数パーセント縮めていたとしています。この推定は統計モデル上の分解で、給食のない子どもとの比較や、給食をなくした場合の効果の推定は含みません。

過体重・肥満との関係は研究によって分かれ、やせとの関連はほとんど見られていません

2006〜2015年の都道府県データを使った研究は、公立中学校の給食実施率が高い都道府県ほど、その後の男子の過体重・肥満の割合が低い関連を報告しましたが、女子では有意でありませんでした。1975〜1994年の国民栄養調査で、小学生を比較対照にして中学校給食のない地区とある地区を比べた研究は、全体では体重への有意な影響はほぼ見られなかった一方、父親が事務職以外の家庭や支出の少ない家庭の子どもで、中学校給食がないとBMIと肥満が増えたと報告しています。2014年と2018年の国民健康・栄養調査を合わせた323人の横断研究では、給食を食べている生徒といない生徒で体格に有意な差は見られませんでした。やせについては、3本とも有意な関連がないか、ほとんど見られませんでした。単位も時期も違うため、3本の数字は並べて比べられません。

研究がまだ答えていないことがあります

比べた単位は研究ごとに違います。栄養摂取の3本は同じ子どもの給食のある日とない日、首都圏の研究は給食からの摂取量の統計的な分解、体格の3本は都道府県の実施率、地区の給食の有無、生徒一人ひとりが給食を食べているかどうかです。給食費の負担が変わったときに子どもの食事が変わるか、夏休みなど長い休みの間に何が起きるか、給食の献立の違いが栄養にどう影響するかは、今回確認した研究では検証されていません。給食費の無償化の効果は、給食費の無償化と家計のコラムで別に整理しています。

参照した研究の標本と報告

同じ論点を扱っていても、研究が調べた対象と報告の範囲は違います。標本と報告を並べて読みます。

研究 標本 報告 限界
日本の学校給食:小中学生のより健康的な栄養摂取への寄与Keiko Asakura、Satoshi Sasaki(2017) 12都道府県の小学校14校・中学校13校の小学生629人と中学生281人(2014年)。給食のある登校日2日と給食のない休日1日の食事記録 6割以上の栄養素で登校日と休日の摂取量に差があり、摂取不足はほぼすべて給食のない休日に多かったと報告した。脂質と食塩の過剰、食物繊維の不足は給食があっても残ったとしている。 1時点の横断調査で、給食のある日とない日の比較であり、給食の有無が子どもの健康状態を変えたかは調べていない。所得による差や給食費の負担は扱っていない。
世帯収入は日本の小学生の食品・栄養摂取と関連し、とくに給食のない日に関連が見られるNobuko Murayama、Hiromi Ishida、Taeko Yamamoto、Sayaka Hazano、Akemi Nakanishi、Yumi Arai、Miho Nozue、Yukiko Yoshioka、Saori Saito、Aya Abe(2017) 東日本4県の公立小学校19校の5年生と保護者836組(2013年9〜12月)。給食のある日2日とない日2日の写真付き食事記録 世帯収入が低いほど魚介類・緑黄色野菜やたんぱく質などの摂取が少ない関連が見られ、その関連は給食のある日には有意でなく、給食のない日に有意だったと報告した。 1時点の横断調査で、給食が所得による差を縮めた因果効果を推定したものではない。東日本4県の5年生に限られる。堀川らの2020年の研究は同じ調査の別の分析で、独立した追試ではない。
世帯収入別にみた、給食のある日とない日の日本の小学生の栄養素充足Chika Horikawa、Nobuko Murayama、Hiromi Ishida、Taeko Yamamoto、Sayaka Hazano、Akemi Nakanishi、Yumi Arai、Miho Nozue、Yukiko Yoshioka、Saori Saito、Aya Abe(2020) 東日本4県の公立小学校19校の5年生836人。給食のある日2日とない日2日の食事記録と、保護者が回答した世帯収入(低・中・高の3区分) どの収入区分でも、給食のない日は多くの栄養素で摂取不足が多かったと報告した。給食のない日には低収入の子どもで鉄・亜鉛などの不足が中収入より多く、給食のある日にはこの差が有意でなかったとしている。 村山らの2017年の研究と同じ調査の別の分析で、独立した追試ではない。横断調査であり、給食の有無が差を縮めた因果効果は推定していない。
全員対象の学校給食は、日本の子どもの果物・野菜摂取の社会経済的な差を縮めるMai Yamaguchi、Naoki Kondo、Hideki Hashimoto(2018) 首都圏で行われた社会調査に参加した6〜12歳の子ども719人。子ども向けの簡易食事歴質問票 母親の学歴が低い家庭の子どもほど野菜の摂取が少ない差が見られた一方、給食からの摂取量には家庭の社会経済的状況による差がなく、給食が野菜で約1割、果物で数パーセント、この差を縮めていたと報告した。 首都圏の横断データで、給食のない子どもとの比較ではない。差を縮めた割合は統計モデル上の分解であり、給食をなくした場合や給食費を無償にした場合の効果は検証していない。
学校給食が中学生の過体重・肥満に与える影響:日本の全国研究Atsushi Miyawaki、J. S. Lee、Yasuki Kobayashi(2019) 2006〜2015年の政府統計を使った都道府県別の集計パネル。公立中学校の給食実施率と、13〜15歳の過体重・肥満の割合(性別・出生年別のコホート) 男子では、給食実施率が高い都道府県ほど後の年の過体重・肥満の割合が低くなる関連を報告した。女子では負の方向だが有意でなく、やせや平均体重・身長には有意な関連がなかったとしている。 都道府県単位の集計データで、個々の生徒が給食を食べたかどうかは観測していない。男子だけで有意であり、給食費の負担や無償化の効果は扱っていない。
学級全員への栄養に配慮した昼食:中学生の体重への短期・長期の影響Shiko Maruyama、Sayaka Nakamura(2025) 1975〜1994年の国民栄養調査で身長・体重を測った中学生と小学生。中学校給食のない地区とある地区を、小学生を比較対照にして差の差で比べた 全体では体重への有意な影響はほぼ見られなかったが、父親が事務職以外の家庭や支出の少ない家庭の子どもでは、中学校給食がないとBMIと肥満が増えたと報告した。やせへの影響はほとんど見られず、肥満を抑える関連は中学卒業後数年も残ったとしている。 1975〜1994年の日本の調査で、現在の給食の献立や家庭の食環境とは異なる。給食の有無の比較であり、給食費の負担や無償化の効果は扱っていない。
日本の中学生の学校給食と体格:国民健康・栄養調査からSuzuna Iwano、Kotone Tanaka、Aru Takaoka、Daisuke Machida、Yasutake Tomata(2025) 2014年と2018年の国民健康・栄養調査を合わせた12〜15歳の323人(給食を食べている人は65.6%) 給食を食べている生徒と食べていない生徒で、普通体重・過体重と肥満・やせのいずれの割合にも有意な差は見られなかったと報告した。 標本が323人と小さい横断研究で、給食を食べない理由(学校の選択制、弁当、アレルギーなど)が体格と関係している可能性を取り除けない。給食費の負担は扱っていない。

一次資料と確認日は研究検証台帳の各ページに記載しています。

この論点に対応する問い

  1. 給食がある日とない日で、子どもの栄養のとり方に違いがあると報告されていますか?

    日本の小中学生の食事記録を使った研究では、給食のない日のほうが多くの栄養素で摂取不足が多かったと報告されています。12都道府県の研究では、脂質と食塩のとりすぎ、食物繊維の不足は給食のある日にも残っていたと報告されています。いずれも1時点の調査で、給食が健康状態を変えたかまでは調べていません。

    研究

  2. 家庭の収入による子どもの食事の差は、給食がある日には小さいと報告されていますか?

    東日本4県の小学5年生を調べた同じ横断調査の分析2本では、収入による栄養摂取の差は給食のない日に見られ、給食のある日には有意でなかったと報告されています。給食が差を縮めた因果効果を推定した研究ではありません。

    研究

  3. 日本で、学校給食を食べることと子どもの肥満ややせの関係は報告されていますか?

    日本の中学生を対象にした研究では、過体重・肥満との関係は結果が分かれています。都道府県の給食実施率が高いほど男子の過体重・肥満の割合が低い関連、1975〜1994年の調査で全体では体重への有意な影響がほぼ見られず一部の家庭で給食がないとBMIと肥満が増えたこと、近年の個人データで有意差がなかったことが、それぞれ報告されています。やせとの関連はほとんど見られていません。

    研究

この整理で分からないこと

限界
この整理は個々の子どもの栄養状態や体重の変化を予測しません。栄養摂取と収入による差の研究は1時点の調査で、給食が差を縮めた因果効果は推定していません。体格の3本は中学生が対象で小学生の給食には及ばず、1975〜1994年の研究は差の差で影響を推定したものの増加は一部の家庭に限られ、ほかの2本は関連を見たものです。標本の限りも研究ごとに違い、12都道府県の研究は給食のない日が休日、東日本の2本は同じ5年生の調査、首都圏の研究は統計モデル上の分解、都道府県の研究は男子だけ有意で一人ひとりの喫食を見ておらず、1975〜1994年の研究は現在の食環境と異なり、323人の研究は2年分を合わせた横断調査で給食を食べない理由を分けられません。給食費の負担や無償化を変えたときの効果は、どの研究も検証していません。市区町村ごとの給食の実施状況や給食費の扱いは、各自治体の公式案内に載っています。