観測型FAQ研究
転校した子どもは、学力が伸びにくいと研究で報告されていますか?
- 回答の要約
- 報告は一様ではありません。1994年までの26研究の統合では転校した子どもの読解・算数が平均して低く、米国テキサス州の学区内の転校では転校した年の算数の伸びが低い結果でした。ニューヨーク市では学校の仕組みによる転校で英語(国語)と算数が低く、それ以外の転校で英語(国語)が上がりました。オーストラリアの転居の研究では、転居が多い子どもの成績の低さは家庭と住まいを考慮すると見られなくなり、中程度の転居は成績の向上と関連しました。日本の学校で同じ比較をした研究は、今回確認した範囲にありません。
1975〜1994年の26研究の統合では、平均して読解・算数が低い結果でした
幼稚園から小学6年生までの転校と学力を調べた1975〜1994年の26研究を統合したメタ分析は、個々の研究の効果量がほぼすべて負で、統合した効果量は読解でマイナス0.25、算数でマイナス0.22だったと報告しています。転校の頻度、家庭の社会経済的地位、学年で効果量がばらつき、軍人家庭の子どもの標本は例外でした。転校した子としなかった子のもともとの違いを取り除いた推定ではありません。
テキサス州の算数の記録では、学区内の転校で転校した年の伸びが低い結果でした
米国テキサス州の公立学校で4〜7年生を追跡した1990年代半ばの算数の記録を使った研究は、同じ学区内の転校では学校の質の改善は見られず、転校した年に短期の算数の伸びの低下が見られたと報告しています。学区をまたぐ転校では平均して学校の質がわずかに上がったとしていますが、これは学校の質の指標で、学力が上がったという結果ではありません。転校した本人の負担には、年度途中の転校かどうかで差は確認されませんでした。転居の理由は記録になく、離婚や失業などの家庭の変化と転校の影響を完全には分けられないと著者自身が述べています。
ニューヨーク市の記録では、学校の仕組みによる転校とそれ以外で、英語(国語)の向きが分かれました
ニューヨーク市の公立小中学校の縦断記録を使った研究は、在籍校の学年の区切りなど学校の仕組みによって生じる転校では中期的に英語(国語)と算数の成績が低くなり、それ以外の理由の転校では英語(国語)の成績が上がったと報告しています。
オーストラリアの全国縦断調査では、転居が多い場合の成績の低さは家庭と住まいを考慮すると見られなくなりました
1990年代後半に生まれた子ども3,481人の全国縦断調査を使った研究は、転校ではなく転居を数えたもので、転居と成績の関連は全体に小さく、転居が多い子どもの成績が低い傾向は、家庭と住まいの状況を考慮すると消えたと報告しています。中程度の転居、とくに別の地域への転居は成績の向上と関連し、就学前後の転居は3年生の成績の低さと関連したものの、5・7年生では関連しませんでした。
この回答が参照した研究
研究ごとに、調べた対象(標本)、報告された内容、この問いでの用い方を分けて示します。
| 研究 | 標本 | この問いでの用い方 |
|---|---|---|
| 転校と学力:メタ分析Majida Mehana、Arthur J. Reynolds(2004) | 幼稚園から小学6年生までの転校と読解・算数の学力を調べた1975〜1994年の26研究(標本数は62〜15,000人) | 1994年までの研究を統合した平均では負の関連 |
| 混乱か、より良い学校への移動か:転校の費用と便益Eric A. Hanushek、John F. Kain、Steven G. Rivkin(2004) | 米国テキサス州の公立学校で4〜7年生を追跡した3つの学年集団(1学年あたり20万人超、1990年代半ば)の算数の学力記録 | 学区内の転校で転校した年の算数の伸びが低かった例 |
| 転校は影響するか:転校が児童生徒の成績に与える因果効果Amy Ellen Schwartz、Leanna Stiefel、Sarah A. Cordes(2017) | 米国ニューヨーク市の公立小中学校に通う児童生徒の縦断記録 | 学校の仕組みによる転校とそれ以外で英語(国語)の向きが分かれた例 |
| オーストラリアの子どもの転居と学業成績:縦断分析Sergi Vidal、Janeen Baxter(2018) | 1990年代後半に生まれた子ども3,481人の全国縦断調査と、3・5・7年生の全国学力調査の得点 | 家庭と住まいを考慮すると転居の多さとの関連が消え、中程度の転居は成績の向上と関連した例 |
この回答で分からないこと
- 限界
- いずれも日本の学校制度での結果ではありません。26研究の統合は1994年までの平均で、転校した子としなかった子のもともとの違いを取り除いた因果効果でもありません。テキサス州の結果は算数の記録で離婚や失業などの家庭の変化と完全には分けられず、ニューヨーク市の転校の種類は学校の仕組みから推定したもので、家庭が選んだ理由ごとの効果ではありません。オーストラリアの研究は転校ではなく転居を数えた1つの出生集団の結果で、個別の子どもの転校後の成績は予測しません。
- 出典の層
- 一次資料を確認した研究4件の報告です。研究の対象と識別方法は同じではありません。
関連する読みもの
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- 研究検証台帳標本・報告・限界・一次資料を研究ごとに確認できます。
- 観測型FAQの一覧テーマごとの問いと回答の要約を一覧で読みます。