観測型FAQ研究
貸与型奨学金を借りられる人が増えたり、高校在学中に採用が決まったりすると、大学進学は増えると日本の研究で報告されていますか?
- 回答の要約
- 研究ごとに中身が違います。1999年の収入基準の変更(1996〜2003年のデータ)では、新たに貸与を受けられるようになった層の短大・大学進学確率の上昇が変更の直後に限られました。予約採用に大学進学を促す効果があったと報告した研究が1本あり(2005〜2011年の調査など)、別の研究は2005年11月の高校3年生の低所得層で予約採用と大学志願の関連(因果効果ではない)を報告しています。
1999年の収入基準の変更では、新たに貸与を受けられるようになった層の短大・大学進学の上昇が直後に限られていました
1999年に、貸与型奨学金の申請に使う収入基準の地域区分がなくなりました。この変更を使い、1996〜2003年の市町村データと、過去の居住地が分かる個人データで比べた研究は、変更で新たに貸与を受けられるようになった層で短大・大学への進学確率が上がったものの、その効果は制度変更の直後に限られたと報告しています。
予約採用には進学を促す効果があったと報告されています
大学生や高校生、家計を対象にした全国調査の個票データを使った研究は、高校在学中に奨学金の採用が決まる予約採用の仕組みに、大学進学を促す効果があったと報告しています。
2005年の高校3年生では、低所得層で予約採用と志願の関連が強くみられました
2005年11月の全国の高校3年生と保護者の調査を使った分析は、性別・きょうだい数・成績・父親の教育年数などを一定にしても、低所得層では予約採用が決まった生徒が大学を志願しやすく、オッズ(なりやすさの比)は3倍近かったと報告しています。採用されるかどうかが成績や家計にも左右されるため、関連として読む結果です。
この回答が参照した研究
研究ごとに、調べた対象(標本)、報告された内容、この問いでの用い方を分けて示します。
| 研究 | 標本 | この問いでの用い方 |
|---|---|---|
| 奨学金の制度変更が進学行動に与える影響佐野 晋平、川本 貴哲(2014) | 1999年に貸与型奨学金の申請に使う収入基準の地域区分がなくなったことを利用した、1996〜2003年の市町村データと、過去の居住地が分かる個人データ | 1999年の収入基準の変更を使い、進学確率の上昇が直後に限られたと報告 |
| 奨学金は大学への進学、大学卒業後の収入拡大・正規雇用の促進に寄与しているのか萩原 里紗、深堀 遼太郎(2016) | 大学生の生活実態調査、2005〜2011年の高校生の進路追跡調査、2014年度の教育費負担の実態調査など、既存の全国調査の個票データ | 予約採用の仕組みに進学を促す効果があったと報告 |
| 教育の機会均等と予約採用の効用藤村 正司(2007) | 2005年11月に全国の高校3年生とその保護者(4,000人)を対象に行われた進路調査と、その追跡調査 | 2005年の高校3年生で、低所得層の予約採用と大学志願の関連を報告 |
この回答で分からないこと
- 限界
- 1999年の結果は新たに貸与を受けられるようになった層と変更の直後に限られ、予約採用の結果は2017年以降の給付型奨学金を含みません。いずれも現在の貸与額・金利・返還制度や、2020年からの修学支援新制度のもとでの効果ではありません。2005年の高校3年生の結果は志願段階の関連で、採用が成績や家計にも左右されるため因果効果ではありません。
- 出典の層
- 一次資料を確認した研究3件の報告です。研究の対象と識別方法は同じではありません。
関連する読みもの
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