観測型FAQ研究
貸与型奨学金や学生ローンを借りた人は、結婚や出産の時期、子どもの数、住宅の取得に違いがあると報告されていますか?
- 回答の要約
- 日本で確認できた研究は1本で、とくに2年制の学校を卒業した女性で、貸与型奨学金を受けたグループは受けなかったグループより結婚の時期が遅く、子どもの数も少なかったと報告しています。米国では、女性の第1子の出産の遅れとの関連(借入額がかなり大きい場合に目立つ)と、学生ローンが10%増えると離学後5年間の住宅取得率が1〜2ポイント下がったという報告があります。
日本では、とくに2年制の学校を卒業した女性で関連が報告されています
慶應義塾大学が収集した全国のパネル調査の付帯調査を使った研究は、とくに短大・専門学校など2年制の高等教育を卒業した女性で、貸与型奨学金を受けたグループは受けなかったグループより結婚の時期が遅く、子どもの数も少なかったと報告しています。受給するかどうかは本人や家庭の事情で決まるため、違いのすべてを奨学金の影響とは読めません。
米国の縦断調査では、女性の第1子の出産の遅れが報告されています
2000年代に成人期を迎えた米国の若者を追った研究は、学生ローンが女性の第1子の出産の遅れと関連し、とくに借入額がかなり大きい場合に目立ったと報告しています。借入の有無は無作為に決まっていないため、因果効果とは読めません。住宅ローンやクレジットカードの借入は、逆に親になることに先立って現れていました。
米国の行政データでは、借入の増加と住宅取得率の低下が報告されています
信用情報と在学歴を結び付けた米国の行政データで、出身州の公立4年制大学の授業料の変化を手がかりに借入額の影響を取り出した研究は、学生ローンが10%増えると、学校を離れてから5年間の住宅取得率が1〜2ポイント下がったと報告しています。
この回答が参照した研究
研究ごとに、調べた対象(標本)、報告された内容、この問いでの用い方を分けて示します。
| 研究 | 標本 | この問いでの用い方 |
|---|---|---|
| 日本の若者における奨学金の借入と家族形成Jie Wang、Hideo Akabayashi、Masayuki Kobayashi、Shinpei Sano(2024) | 慶應義塾大学が収集した日本家計パネル調査の第二世代付帯調査による、高等教育を卒業した若者の全国データ | 日本の全国データで、2年制卒の女性を中心に結婚の遅れと子どもの数の少なさを報告 |
| 子どもを持つ余裕はあるか:借入と米国の若者Michael Nau、Rachel E. Dwyer、Randy Hodson(2015) | 米国の1997年時点の若者を追う全国縦断調査(2000年代に成人期を迎えた世代) | 米国の若者で学生ローンと女性の第1子の出産の遅れを報告 |
| 学生ローンと住宅の取得Alvaro A. Mezza、Daniel R. Ringo、Shane M. Sherlund、Kamila Sommer(2017) | 2004年に23〜31歳だった米国の全国的な世代を1997〜2010年まで追った、信用情報と在学歴を結び付けた行政データ | 米国の行政データで借入額の増加と住宅取得率の低下を報告 |
この回答で分からないこと
- 限界
- 日本の研究は1本で、奨学金の額や返還の方法、返還支援の有無による違いは今回の確認範囲では分かりません。日本の研究と米国の出産の研究は、受給や借入が無作為に決まっていないため、違いのすべてを奨学金や学生ローンの影響とは読めません。米国の学生ローンは金利や返済の仕組みが日本の貸与型奨学金と異なります。住宅の結果は2004年に23〜31歳だった米国の世代を1997〜2010年に追った離学後5年間の取得率で、結婚や出産は扱っておらず、数値は討議用論文の改訂版での表し方で、のちに学術誌へ掲載された版とは異なります。
- 出典の層
- 一次資料を確認した研究3件の報告です。研究の対象と識別方法は同じではありません。
関連する読みもの
- 自治体の奨学金返還支援は対象と金額と条件の順で確かめます自治体の奨学金返還支援は、対象となる奨学金、支援総額と年数、住まいと仕事の条件の順に確かめます。実際の制度例をもとに要綱の読み方を整理して解説します。
- 奨学金と進学・中退・卒業後の暮らしの関係は、どこまで調べられているか給付型と貸与型の奨学金について、進学、在学中の中退、卒業後の暮らしに分けて、研究と国の統計が報告している範囲を整理します。
- 研究検証台帳標本・報告・限界・一次資料を研究ごとに確認できます。
- 観測型FAQの一覧テーマごとの問いと回答の要約を一覧で読みます。