観測型FAQ研究
子ども医療費の助成で、親の心理的な負担や家計が医療費で困る危険は変わると報告されていますか?
- 回答の要約
- 報告は少なく、測っているものも研究ごとに違います。青森県の調査では無償化で親の心理的な負担の改善が報告されましたが、主に所得が上位半分の世帯と小学生の親での結果です。大企業の健康保険組合の7〜14歳の研究は、窓口負担0円と比べ、1回2米ドル程度の負担では家計の金銭的な危険はあまり増えなかったとしています。世帯が払った自己負担額の変化を直接測った研究は確認できませんでした。
青森県では、所得の上位半分と小学生の親を中心に、親の心理的な負担の改善が報告されています
青森県40市町村の子どもの生活実態調査(2018年と2023年)を使った研究は、2時点の間に子どもの医療費の無償化を導入した市町村とそれ以外を比べ、親の心理的な負担の尺度(K6)が0.60ポイント改善したと報告しています。改善は主に所得が上位半分の世帯と小学生の子どもを持つ親で見られ、中学生の子どもを持つ親では有意な効果は確認されませんでした。子どもの健康や医療へのアクセスには有意な影響がなかったと報告しています。
0円と比べ、少額の負担では家計の金銭的な危険はあまり増えなかったと報告されています
大企業の健康保険組合の請求データ(2005〜2015年)で7〜14歳を見た研究は、窓口負担が0円のときと比べ、1回あたり2米ドル程度の少額の自己負担は主に健康で受診の多い子どもの利用を減らし、病気がちな子どもの受診は大きく妨げず、家計の金銭的な危険もあまり増やさなかったと報告しています。
月ごとの上限では医療費に有意な影響がなく、薬の負担をなくすと請求データ上の処方薬の支出が増えたと報告されています
ある県の国民健康保険の請求データ(2013〜2017年)を見た研究は、通院・入院の自己負担に月ごとの上限を設ける仕組みは、外来・入院の医療費に有意な影響を示さなかったと報告しています。薬の自己負担をなくす仕組みは、請求データ上の処方薬の支出を全体で116%、健康状態のよい子どもで121%に増やし、健康状態のよくない子どもでは増やさなかったと報告しています。この研究は医療費を見たもので、世帯の自己負担額や家計の金銭的な危険は扱っていません。
この回答が参照した研究
研究ごとに、調べた対象(標本)、報告された内容、この問いでの用い方を分けて示します。
| 研究 | 標本 | この問いでの用い方 |
|---|---|---|
| 子どもの医療費無償化のスピルアップ効果佐藤大晃、中室牧子(2026) | 青森県40市町村の「青森県子どもの生活実態調査」(2018年と2023年)の小学5年生・中学2年生とその保護者 | 青森県で、主に所得の上位半分と小学生の親で心理的な負担の改善を報告した討議用論文 |
| 0円は特別な価格か 子どもの医療からの証拠Toshiaki Iizuka、Hitoshi Shigeoka(2022) | 大企業の健康保険組合の診療報酬請求データ(2005年4月〜2015年3月)のうち、市区町村の助成が0円・少額の定額・定率の負担で異なった7〜14歳の子ども | 0円と比べ、少額の負担では家計の金銭的な危険があまり増えなかったとする分析 |
| 医療費助成が小中学生の医療の利用に与える影響 地域の自然実験Atsushi Miyawaki、Yasuki Kobayashi(2019) | ある県で助成が拡大された前後の、国民健康保険に加入する子どもの診療報酬請求データ(2013年4月〜2017年1月) | 月ごとの上限は医療費に有意な影響がなく、薬の負担をなくすと処方薬の支出が増えたとする分析 |
この回答で分からないこと
- 限界
- 親の心理的な負担の研究は、青森県の小学5年生・中学2年生とその保護者を2時点で調べた調査で、同じ人を追ったものではなく、学術誌の査読を経ていない討議用論文です。家計の金銭的な危険の結果は大企業の健康保険組合に加入する7〜14歳の請求データからの推定で、同じ著者の2018年の作業論文と同じデータを使っており独立した追試ではなく、家計のやりくりや困窮感を尋ねた調査でもありません。月ごとの上限と薬の結果は1つの県の国民健康保険の加入者に限られます。
- 出典の層
- 一次資料を確認した研究3件の報告です。研究の対象と識別方法は同じではありません。
関連する読みもの
- 通院で窓口支払いがある421自治体、222自治体が6都道府県に集中子ども医療費助成の自己負担を全国1,741市区町村で集計しました。通院で「窓口で支払いあり」は421自治体で、半数超が6都道府県に集まっています。通院と入院の違いや候補地の確認順序を紹介します。
- 子ども医療費助成で受診が増えることと、子どもが健康になることは別の問い子ども医療費の助成が広がったとき、受診、受診の中身、入院や健康、受診控え、親の負担について日本の研究が何を報告しているかを、研究ごとの対象と限界とあわせて整理します。
- 研究検証台帳標本・報告・限界・一次資料を研究ごとに確認できます。
- 観測型FAQの一覧テーマごとの問いと回答の要約を一覧で読みます。