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観測型FAQ研究

奨学金を受けている大学生は、受けていない学生より中退しにくいと研究で報告されていますか?

回答の要約
結果は研究によって割れています。日本では1973〜2005年入学の主に貸与型の時代の全国集計で、受給率の上昇が1〜2年遅れて大学中退率の低下と結び付いていたという関連の報告です。米国では、受給資格や給付額の境界付近の学生(フロリダ州、テキサス州の4年制大学の初年次の低所得層)でその後の学位取得の増加が報告される一方、ウィスコンシン州の実験では4年制大学の2年間の在学継続が1.7ポイント増えたものの、学位取得への効果はごく小さいという結果でした。

日本全体の時系列では、奨学金受給率の上昇と中退率の低下が結び付いていました

学校基本調査から入学年度別に推計した1973〜2005年入学の大学中退率を使った研究は、家計所得の増加や日本学生支援機構(旧日本育英会)の奨学金受給率の上昇が、1〜2年ほど遅れて中退率の低下と結び付いていたと報告しています。全国の年次の集計値の分析で、個人を比べたものではありません。

米国フロリダ州では、受給資格の境界付近で学位取得が22%増えていました

所得に応じた州の給付型奨学金で、受給資格の基準のすぐ上と下にいた学生を比べた研究は、受給資格が進学と単位の取得、6年以内の学士号取得を増やしたと報告しています。基準付近の学生では学位取得が22%増えました。

米国テキサス州の4年制大学の初年次では、追加の給付を受けられる資格が学位取得を増やしていました

公立大学の行政記録で、低所得の学生について連邦の給付型奨学金の額が変わる境界を比べた研究は、4年制大学の初年次の学生で、追加の給付を受けられる資格が学位取得とその後の所得を増やしたと報告しています。

無作為化の実験では、学位取得への効果はごく小さいという結果でした

米国ウィスコンシン州の低所得の大学生48,804人を無作為に分けた実験は、給付の提供で4年制大学の2年間の在学継続が1.7ポイント増えた一方、6年以内の学士号取得の差は統計的に有意ではなく、学位取得への効果はごく小さいと報告しています。

この回答が参照した研究

研究ごとに、調べた対象(標本)、報告された内容、この問いでの用い方を分けて示します。

研究 標本 この問いでの用い方
奨学金は大学中退を抑制するか――時系列データを用いた検討朴澤 泰男(2016) 学校基本調査から入学年度別に推計した日本全体の大学中退率(1973〜2005年入学の33時点) 日本の1973〜2005年入学の中退率と奨学金受給率の時系列の関連
進学の先を見る:所得に応じた給付型奨学金が進学・在学継続・卒業に与える因果効果Benjamin L. Castleman、Bridget Terry Long(2016) 米国フロリダ州の所得に応じた給付型奨学金で、受給資格の基準のすぐ上と下にいた学生の比較 米国フロリダ州の給付の受給資格の境界付近で学位取得の増加
給付型奨学金が卒業・所得・社会的な便益に与える効果Jeffrey T. Denning、Benjamin M. Marx、Lesley J. Turner(2019) 米国テキサス州の公立大学の行政記録と、低所得の学生で連邦の給付型奨学金の額が変わる境界の比較 米国テキサス州の連邦の給付額の境界で学位取得と所得の増加
給付型奨学金の提供が大学での学業継続と学位取得に与える影響:ウィスコンシン州の無作為化実験Deven E. Carlson、Felix Elwert、Nicholas Hillman、Alex Schmidt、Barbara L. Wolfe(2019) 米国ウィスコンシン州の低所得の大学生48,804人を、給付の提供を受ける群と受けない群に無作為に分けた実験 米国ウィスコンシン州の無作為化実験で学位取得への効果はごく小さい

この回答で分からないこと

限界
日本の時系列は1973〜2005年入学を中心とする主に貸与型奨学金の時代の全国集計で、給付型奨学金は含まず、個人の中退を因果効果として比べた日本の研究は今回確認できていません。米国の結果は、フロリダ州の所得に応じた州の給付、テキサス州の連邦の給付額の境界、ウィスコンシン州の民間財団による給付実験のもので、境界の比較は基準付近の学生についての結果です。いずれも日本の制度や金額とは異なり、貸与型奨学金の効果とも別です。
出典の層
一次資料を確認した研究4件の報告です。研究の対象と識別方法は同じではありません。