観測型FAQ研究
子どもが幼いうちに暮らす地域が変わると、大人になってからの所得に違いが出ると研究で報告されていますか?
- 回答の要約
- 米国の2本の研究で報告されています。貧困率の高い地区の公営住宅に住む低所得世帯を対象にした家賃補助の抽選実験では、13歳より前に貧困率の低い地区へ移った子どもで大学進学率と成人後の所得が高く、思春期に移った子どもではわずかに負の影響が見られました。別の研究は、子どもの成人後の結果が良い地域へ移った家族で、子どもの結果がその地域で育った年数に比例してその地域の水準へ近づいたと報告しています。日本の市区町村間の転居で同じことが起きるかは、今回確認した研究からは示されていません。
家賃補助の抽選による社会実験では、13歳より前の転居で所得が高い結果でした
米国の貧困率の高い地区の公営住宅から、貧困率の低い地区へ移るための家賃補助を抽選で受けた家族と受けなかった家族の子どもを、成人後の税務記録で追った研究は、13歳より前に移った子どもで大学進学率と成人後の所得が高かったと報告しています。思春期に移った子どもでは、わずかに負の影響が見られました。
700万を超える転居家族では、転入先で育った年数に比例して、その地域の子どもの結果へ近づきました
米国で通勤圏や郡をまたいで転居した700万を超える家族の子どもを分析した研究は、子どもの成人後の結果が良い地域へ移った場合、子どもの結果はその地域で育った年数に比例して改善したと報告しています。その速さは、転入先にもとから住む子どもの結果へ居住1年あたり約4%ずつ近づく割合で、所得が毎年約4%ずつ増えるという意味ではありません。きょうだいの比較や、立ち退きなどで生じた転居も使って、地域の影響を家族の違いから分けています。
この回答が参照した研究
研究ごとに、調べた対象(標本)、報告された内容、この問いでの用い方を分けて示します。
| 研究 | 標本 | この問いでの用い方 |
|---|---|---|
| より良い地域で育つことが子どもに与える影響:「機会への転居」実験からの新しい証拠Raj Chetty、Nathaniel Hendren、Lawrence F. Katz(2016) | 米国の貧困率の高い地区の公営住宅から、貧困率の低い地区へ移るための家賃補助を抽選で受けた家族と受けなかった家族の子ども(成人後の税務記録) | 抽選による家賃補助で、転居した年齢による差を報告 |
| 地域が世代間の所得移動に与える影響(第1部):子ども期の居住期間の効果Raj Chetty、Nathaniel Hendren(2018) | 米国で通勤圏や郡をまたいで転居した700万を超える家族の子ども(税務記録) | 多数の転居家族で、育った年数に比例して転入先の水準へ近づく地域の影響を報告 |
この回答で分からないこと
- 限界
- 2本とも米国の、地域間の差が大きい環境での研究です。抽選実験は公営住宅に住む低所得世帯の子どもが対象で、所得などが高かったのは13歳より前に移った場合に限られます。もう1本は地域の良さを、そこで育った子どもの成人後の結果で測っており、学校や制度のどの要素が影響したかは特定していません。日本の地域差の大きさや、日本の転居世帯の子どもへの効果は示していません。
- 出典の層
- 一次資料を確認した研究2件の報告です。研究の対象と識別方法は同じではありません。
関連する読みもの
- 子育て世帯の引っ越し、時期の決め方子育て世帯が引っ越しの時期を決めるときに確かめたい、子どもの予定や住まい探しの段取り、転入後の手続きを順序立てて整理します。
- 引っ越し・転校が子どもに与える影響は、研究でどこまで分かっているか転校と学力、引っ越しと心の健康、転校の時期、育つ地域と成人後の所得を、海外と日本の研究の標本と報告に分けて整理します。転入先で変わる子ども医療費助成の対象年齢も、行政統計で確かめます。
- 研究検証台帳標本・報告・限界・一次資料を研究ごとに確認できます。
- 観測型FAQの一覧テーマごとの問いと回答の要約を一覧で読みます。