観測型FAQ研究
手で書いて学ぶのと、キーボードで打って学ぶのとで、学んだことの身につき方に差があると報告されていますか?
- 回答の要約
- 結果は分かれています。学生の3研究では、パソコンでノートを取った側が考え方を問う問題で低い成績でした。そのうち研究1の追試では、パソコンの側が上回ることはなかったものの、手書きが情報の取り込みをよくして直後の学習を高めるという考えは支持されませんでした。大学生の24研究のメタ分析は、手書きのノートを取って見直した側の成績が少し高かった(g = 0.248)としています。幼稚園の子どもの実験では、単語を書く課題で手書きの練習の側が上回りました。ここで紹介した研究に、小学生を対象と明記した比較はありません。
講義ノートの研究では、手書きの側が高かった報告と、その説明を支持しなかった追試があります
学生の3つの研究は、パソコンをノートを取ることだけに使っても、パソコンでノートを取った学生は考え方を問う問題の成績が低かったと報告し、講義をそのまま書き写しがちなことが学習を妨げているとしました。一方、その研究1を同じ手続きでくり返した追試(パソコン74人、手書き68人。年齢は抄録に書かれていません)は、パソコンの側がノートの語数も書き写しも多かったものの、直後の小テストでパソコンの側が手書きの側を上回ることはなく、似た8研究の探索的なメタ分析も同じ傾向だったと報告し、手書きが情報の取り込みをよくすることで直後の学習を高めるという考えは支持されないとまとめています。
大学生の24研究をまとめると、手書きのノートの側が少し高い成績でした
大学生の講義ノートを比べた21論文・24研究のメタ分析は、手書きでノートを取って見直した側の成績が高く(g = 0.248)、ノートの量は打った側が多かった(g = 0.919)と報告しています。効果の大きさは小さめで、見直しを含む成績を見た分析です。直後の小テストを見た追試の結果とあわせると、ノートを取る道具だけで成績の差が決まるとは言えません。
幼稚園の子どもでは、単語を書く課題で手書きの練習の側が上回りました
ドイツの幼稚園の子どもが、8つの文字を、紙にペンで書く練習か、キーボードで打つ練習で16回学んだ実験は、どの課題でも打つ練習が上回ることはなく、単語を書く課題で手書きの練習が上回り、単語を読む課題でも上回る傾向だったと報告しています。文字を見分ける・名前を言う課題で手書きの側が上回ったとは、抄録には書かれていません。人数は抄録に書かれていない1つの研究です。
この回答が参照した研究
研究ごとに、調べた対象(標本)、報告された内容、この問いでの用い方を分けて示します。
| 研究 | 標本 | この問いでの用い方 |
|---|---|---|
| ペンはキーボードより強し:手書きのノートがパソコンのノートより優れる点Pam A. Mueller、Daniel M. Oppenheimer(2014) | 学生(3つの研究。人数は抄録に記載なし) | 学生の3つの研究で、パソコンのノートの側が考え方の問題で低かった報告 |
| まだパソコンを手放さないで:Mueller と Oppenheimer(2014)研究1の直接の追試と、似た研究の小さなメタ分析Heather L. Urry、Chelsea S. Crittle、Victoria A. Floerke、Michael Z. Leonard、Clinton S. Perry(2021) | 講義を見ながらパソコンでノートを取った参加者74人と、手書きで取った68人(年齢は抄録に記載なし。ほかに似た8研究の探索的なメタ分析) | 研究1の追試(74人と68人)。手書きが情報の取り込みをよくして直後の学習を高めるという説明は支持されなかった報告 |
| 打った講義ノートと手書きの講義ノートと大学生の成績:メタ分析Abraham E. Flanigan、Jordan Wheeler、Tiphaine Colliot、Junrong Lu、Kenneth A. Kiewra(2024) | 大学生を対象にした21論文・24の研究(実験と準実験)をまとめたメタ分析 | 大学生の24研究のメタ分析で、手書きのノートの側が少し高かった報告 |
| 手書きか、キーボードか:ペンとキーボードの書く練習が幼児の読み書きに与える影響Markus Kiefer、Stefanie Schuler、Carmen Mayer、Natalie M. Trumpp、Katrin Hille、Steffi Sachse(2015) | ドイツの幼稚園に通う子ども(人数は抄録に記載なし。16回の練習) | 幼稚園の子どもが8つの文字を学び、単語を書く課題で手書きの側が上回った実験 |
この回答で分からないこと
- 限界
- ノートの研究は、学生・参加者(年齢は抄録に記載なし)と大学生が対象で、ここで紹介した研究に、小学生・中学生を対象と明記してノートを手書きするか打つかを比べた研究はありません。子どもの研究は、小学校入学前の子どもが8つの文字を学んだ1つの研究で、学校での教科の学習の結果ではありません。研究によって、直後の小テストか、見直しを含む成績かが違います。この確認は研究の抄録の範囲で、個々の子どもに合う書き方・学び方を判定しません。
- 出典の層
- 一次資料を確認した研究4件の報告です。研究の対象と識別方法は同じではありません。
関連する読みもの
- 1年 国語「かきじゅんを まもって かこう」字を手で書く順番を扱う関連の単元です。この教材の効果を、ここで紹介した研究が確かめたものではありません。
- 学び方の研究ノート:思い出す・間をあける・まぜて解く・手で書く・動画・学習スタイル思い出す練習、間をあけた復習、種類をまぜた練習、手で書くか打つか、動画で学ぶこと、学習スタイルの6つについて、研究で確かめられていることと、まだ確かめられていないことを分けて読みます。関連するエレメンタリーの教材も紹介しますが、その効果をこれらの研究が確かめたものではありません。
- 研究検証台帳標本・報告・限界・一次資料を研究ごとに確認できます。
- 観測型FAQの一覧テーマごとの問いと回答の要約を一覧で読みます。